労働組合ってどんな仕事をしているんだろう。
一番最初に頭に浮かぶのは、春闘だと思います。
毎年、春の時期になると、社員のベア(ベースアップ=基本給の引き上げ)や賞与月数の増加(ボーナスの増加)、労働条件の改善を巡って、経営陣と労働組合とで戦っていますね。
そんな労働組合の執行委員を私は5年間努めてきました。
その経験の中で感じた、労働組合の役割を書いていきます。
労働組合の存在意義
労働組合の存在意義は以下の二つだと思っています。
- 労働組合の存在意義は労働者の意見を聞き、取りまとめること
- その労働者の意見をまとめ、経営者にその意見を伝えること
そもそも、労働組合ってなんであるの?
と思った方は多いと思います。
サラリーマンの立場は「労働者=使われる側」です。
対して、経営者は「使用者=使う側」です。
使う側と使われる側、立場はどっちの方が強いと思いますか?
使う側ですよね。
使う側はその気になれば、労働者の首なんか簡単に切れます。
もし仮に、労働者が自分の給料や待遇が気に入らなくて、意見を言ったとしても、それが一人ないし、少数の意見であれば、その意見は通りません。
「嫌なら辞めてもらって構わない。」
と言われるのがオチです。
しかし、その意見が大多数から出てきたらどうでしょう。
大勢で来られたら、さすがに全員の首を切るわけにはいきませんよね。
一人では弱い立場でも集団になれば、大きな力になる。
一人では経営者には歯向かえないが、労働者集団なら経営者と対等に近い立場で話ができる。
数十人の規模の会社であれば、労働組合の機能はそんなに発揮できませんが、何百人・何千人といるような規模の会社であれば、労働組合の存在意義は増していきます。
具体的にどんなことをやるの?
では、労働者の意見をまとめる為にどんなことを普段しているのでしょうか。
一番比重を置いているのは、「組織強化」です。
組織強化とは、労働者の団結力を高めることです。
労働組合がこういったことをやろう、ああいったことをやろう、と言ってもそれについてくる労働者がいなければ、労働者側は経営者と対等に話なんてできません。
数で優位に立てませんからね。
労働者全員が同じ方向、目的で動くこと。
それが組織としての大きな力になります。
その組織の団結力を高める為に、イベントの開催を企画運営しています。
私のいる会社では、キャンプやバスツアー、講師を呼んでモチベーションアップや仕事のスキルアップを目指すセミナーを開催しています。
- こういう活動をしているんだよ
- 労働組合の活動にこれだけの労働者が参加しているんだよ
- だから、労働組合を敵に回すということはこれだけの労働者を敵に回すことなんだよ
と経営者にプレッシャーをかけられるわけですね。
また、違う支社の人たちとの交流の場も提供できるので、労働者の悩みの分散=退職の抑止の効果もあります。
自分の職場だけだとストレスが溜まることもあると思いますが、他の支社の人たちとの交流によって、自分を見つめなおすきっかけになったりもします。
あとは、春闘の時期になると、来年度の労働条件(給料や休暇の制度など)の改善に向けて、経営者と話をします。
この時、ただ労働組合の執行委員が考えた意見を言うのではなく、各支社へアンケートや訪問活動の中で、意見を集め、取りまとめたもので「要求案」を作り、話をしていきます。
労働者の言うことを何でも通そうとすると、無理が生じます。
例えば、
- 会社の利益以上(会社の支払い能力以上)に給料を求めること
- 会社が円滑に運営できなくなるほどの労働時間の削減
こういった様々な意見を今の会社の現状を照らし合わせて、双方の納得できる要求を作るのが、労働組合の仕事です。
労働者の中には、自分が納得いかない要求案にされることもあるでしょう。
そういったいろいろな事情を抱えた労働者全員の意見や感情をまとめるのも労働組合の仕事なので、春闘の時期はけっこう大変です。
労働者たちの団結力を高め、会社に実状に合わせた双方が納得する要求の作成労働者の退職を防ぎ、組織の活力を高める
- 労働者たちの団結力を高め、会社に実状に合わせた双方が納得する要求の作成
- 労働者の退職を防ぎ、組織の活力を高める
この二つが労働組合の仕事になります。
労働組合がないとどうなるの?
目立つような仕事はなく、あくまで普段の仕事や会社の経営の裏側で、労働者の働く環境の改善を目指しているかんじです。
けど、ないと本当に困るんですよね。
実際に
- 結婚休暇や有給休暇という制度がない会社
- 働く時間について取り決めがない会社
- 残業代がつかない会社
- ボーナスが急にもらえなくなる会社
などなど。
自分が働いている会社がこんな会社だったら、すぐに辞めてやる。
こんな会社があるなんて信じられない。
そう思う方、多いと思います。
でも、実際に世の中にはこういう会社があります。
では、なぜこういう状況の会社になってしまっているのか。
「労働組合」がないんですよ。
経営者が一方的に自分の都合のいいように会社を経営しており、社員には奴隷のように働かせる。
有り得ないことだと思いますが、実際にあるのが世の中です。
みなさんが今の会社で、希望した時に休みが取れて、ボーナスが定期的にもらえ、定時になったら帰れる。
こういった当たり前だと思っていることが、当たり前のようにあるのは労働組合があるからなんですよ。
経営者の思い通りにはさせない。
労働者にも言いたいことはあるんだ。
それを形でできる存在が労働組合なんです。
まとめ
労働組合の存在意義から、なかった場合どうなるか?までまとめてみました。
私が労働組合の役員を努めた時を元にした経験談なので、労働組合の仕事に少しでも興味のある人、労働組合の役員の勧誘を受けている人の参考になればいいなと思います。
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